雨の鎌倉 静寂の場所

報国寺

鎌倉に竹寺として親しまれている報国寺というお寺があります。

台風が日本に接近しているこの日の朝、ふと、竹寺に行こうと思い立ったのです。部屋の窓から空を見上げると薄曇り。
天気予報は一日中、曇りマークになっている。
急いで出掛ける用意をする。
万が一のために傘を持っていこう。

曇り空の下、電車を乗り継いで鎌倉駅へと向かう。

途中、走る電車の窓に小さな雨粒がポツポツと当たり始めた。
雨だ・・・。
鎌倉駅へ着いたお昼頃には、かなり雨足が強くなってきたが、それも良しなのだ。

お腹も空いたので、駅の近場で簡単にお昼ご飯を済ませる。
駅に戻ると、ちょうど報国寺へ向かうバスが出発を今かと待っていた。
この瞬間にも雨はひどくなり、傘にあたる雨音が一段と大きくなる。
急いで乗り込みと、雨の中、バスはゆっくりと動きだした。

駅から報国寺はそれほど遠くない。お天気がいい日や、陽気がいい季節には歩いていく人も多い。
でも、今日は例外。関東地方には明日、台風が上陸するかもしれないという前日。
土砂降りの雨のなか、バス停を降りたのは私だけだった。私の傘が小さなせいか、パンツの裾はずぶ濡れでローファーにも雨が染みてくる始末。天気予報は曇りだったのに・・・

ゼロポイント Eye of Hurricane

DSCN0267ほどなく歩くと、報国寺に着く。
入口のオレンジ色の灯りが何とも云えない風情を醸し出し、暖かく迎えてくれる。
普段なら人も多いのだろうが、こんな日には誰もいない。
入口を入ると、雨が木々に遮られて、急に静かになる。気が変わり、匂いが変わる。
少し色づき始めた木々や草が、雨に湿った青い匂いに包まれて、まるで別世界へと通じるゲートのよう。

お抹茶がセットになった入園料を払い奥へと入っていくと、まっすぐ天へと伸びる無数の竹の庭が広がる。
竹と竹の間隔は一見ランダムのようでありながら、全体を眺めたとき、完璧な美しさをもって目の前にその姿を現す。

お抹茶と砂糖菓子を頂きながら、静かに竹の庭に身を置く。雨は相変わらず激しく降り続いているけれど、ここだけ、ぽっかりと宙に浮いたように静寂な空間。
何も考えない。
雨音が思考を止める。全てが自分の中心へと向かい出す。
そのポイントは穏やかで愛が溢れ出す場所。いつもいつも、ここが始まりなのだ。
雨がますます強くなり、風も少し強まった。
それでも、私の中心は台風の目のように穏やかで安らか静寂・・

あっと云う間にお寺が閉まる16時になる。
その間、2組のカップルと女性たちのグループがずぶ濡れになってやってきた。
みんな、静寂の時をそれぞれに感じ楽みにやってくる。誰もいない、こんな日に・・

冷たく強く降る雨に身を佇ませながら帰りのバスを待つ。
”トトロが現れないかな〜”なんて、おかしなことを考えていると
やがて、水しぶきを上げながらバスがやってきた。

 

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